ゲームUIメモ

ゲームUIのデザイナーが、気になったことを時々書きます。

【CEDEC2018】ゲームUIラウンドテーブルを開催しました【後日録】

  f:id:kino_69:20180916175447j:plain本番直前の様子(事前許可を得ていないためぼかしを入れています)


遅まきながらご報告を。
 
CEDEC2018 2日目にゲームUIラウンドテーブルを開催しました。
交流が少なく孤立しがちなゲームUIデザイナー界隈をなんとかしたくて、課題や悩みを話せる最初の場をつくろうと企画をしました。
結果、会場は満員立ち見御礼という大盛況。
終了後に直接聞いた感想や参加者同士の交流の様子を見ると一定の効果があったようです。(普通のセッションでは参加者同士の交流はまずない)
人数やアンケート結果は9月後半に届くそうなのですが、それも楽しみ。
 
この記事ではイベント裏方としてのいろいろを書いていきます。
当日取りあげたテーマについての個人的な所感は別記事にて。 
 

# どんなイベントだったのか

## ゲームUIについてなんでも話す

ゲームUIデザイナーが誰でも参加できるように敷居が低いものにしよう、というのが僕らの考えでした。
そのためテーマ設定は自由。困っていることや話していることを教えてくださいという形にしました。なのでイベント難易度も中辛(この分野の初心者へ)。
 

## ラウンドテーブルという形式

テーブルを囲んで話題提供者と複数の参加者が着席し、全員が対等な立場で、ディスカッションを行う形式です。
 
円形に座ることには上下関係を廃止、自由に発言をしやすい場にするという狙いがあるそうです。また、何かを決めるために行わないということも重要です。発散と収束でいうと発散のみに絞った場になります。
 
今回はこれに加えこのような進行で行いました。
  • 会場入場前に付箋にテーマを書いてもらいます。
  • スタートしたら進行役が1枚テーマを選び、まず付箋を書いた人に改めてテーマを説明してもらいます。
  • その後、自由に会場の人に発言をしてもらいます。場合によっては司会が関心がありそうな誰かを指名して話してもらいます。
  • だいたい十分前後で1テーマを終わらせ、全体で5テーマを取りあげました。
 
加えて今回は、去年のアニメーションラウンドテーブルを参考に付箋を書いた人が優先入場できる仕組みを採用しました。これについては事前にCEDEC運営へ相談をして許可をもらいました。
 

## 集まったテーマ・発言内容は後日CEDiLにて公開

ラウンドテーブルはCEDECの仕組み上、タイムシフト配信が公開されないため当日の参加者以外に内容が伝わりにくいです。
なので当日の議事録や集まったテーマをCEDiLにアップロードする事にしました。
 
現在こちらにて公開中です。
 

## 集まったテーマ

なんと150枚近くのテーマが集まっていました。
個人的には、正直なところ2−30ぐらいかなと思っていたので、完全に想定外。
急遽その場で大まかにジャンルをつくり分類しました。
  • 組織
  • ツール
  • 表現
  • デザイン

 

## 取りあげたテーマ

なるべく幅広いテーマを取りあげることと、切実そうなものを取りあげること。
その2つを意識してテーマを選びました。(結果的に多少の偏りがでました) 
  • UIデザイナーの採用どうしていますか?
  • セクション間でのコミュニケーションの壁の解決方法 *1
  • 運営で煩雑になるUIの解決方法 *2
  • UIは”センス”説。正or誤どちらでしょうか?
  • UIデザイナーは絵も上手くないといけないのでしょうか?

*1 実際の投稿内容
UI制作の中でセクション間でのUXへの認識や知識の差が、コミュニケーションの壁になるときがあると思うが、うまく解決していくにはどうしたら良いか。
若手とベテランが交じってるとき、若手だけなど・・・

 
*2 実際の投稿内容
運営タイトルでは、最初にある程度想定してUIのデザインをするのですが仕様の拡張や変更により、最終的には、UIルールが崩壊してしまいます。
例えば1つの画面に想定外の情報が増える事により見づらくなってしまう。
プランナの要望にも答えないといけませんが、いつも「みやすさ」VS「情報を見せたい」で衝突してしまいます。どのように解決していますか?
 
当日の内容についてはCEDiLにあげた資料をご覧ください。
内容についての個人的な所感は後日別記事を上げる予定です。
 

## 会場は超満員

元々は40−50名ぐらいを想定して、円形に椅子を30名ほど配置、残りは立ち見としていましたが。
立ち見がぎゅうぎゅうで、後で聞くと入場できなかった方もいたそうです。
公式の参加人数発表は9月後半ですが、少なく見積もっても60人は参加していたのではないでしょうか。
ラウンドテーブルとして椅子を円形に配置した分、スペースを消費したことが悪い方に出てしまいました。
 
 
## ラウンドテーブルはいろんな意見が聞けるいい形式だった

そもそも外で発表をしない方でも優れた見識や学びのある事例を持っているものです。
発表準備のためのコストや、会社からの許可など様々な理由があって話さないだけで。
ラウンドテーブルでは特に発言者の身元を記録しませんし明かす必要もありません。(とはいえ多くの方が明かしてくれたので聞いている僕らにはありがたかったのですが)
ラウンドテーブルはCEDECでそういった方の意見を聞ける貴重な場でもありました。
また業界のことを広く知る意味でも、初心者がいまどんな事に悩んでいるのか・現場とマネージャーの意識の差など、立場の違う意見が集うことそのものにも大きな価値がありました。

 

## そんなわけで想定以上の結果に

投稿数も参加人数も想定以上の結果となりました。
立ち見の方や入れなかった方には申し訳なく思いつつも、このような登壇内容にそれだけの人が集まってくれたことは嬉しかったです。
また、デザイナー以外の参加者も一定数いました。彼らの発言はともすれば内向きになる話題に外からの視点を与えてくれる貴重なものでした。ありがとうございます。
 
参加者に聞いた感想でよかったことは「他社も同じような課題を持っていることがしれてよかった」というものです。
わずか1時間のセッションで多くの解決策を出すのは難しかったですが、それでも多少は気持ちが前向きになれたのならよかったです。
 
冒頭にも書きましたが、終了後に勝手に参加者同士の交流が生まれていたことも嬉しかったです。
一般的なセッションでは登壇者への1対1の挨拶や質問に並ぶ人はいても参加者同士が会話することはまずありません。
 
個人的には、CEDECに今年登壇していたり、遊んだことのあるタイトルのUIデザイナーが多数参加していて、彼らと話をできたことも嬉しかったです。
このセッションをやりたいと思っていた5年前の状況からは考えられないことでした。
 
というわけで改善の余地はありつつも、よい登壇になりました。
来年もやりたいなぁ。
ここで出会った縁もまた1年後というのももったいないので、別のイベントだってやりたい気持ちです。(誰か興味ありましたら)
 

# イベント運営についての所感

ここからは運営目線での話になります。
イベント運営経験が少なく、ラウンドテーブルについては初めてだったため色々とありました。
何かの参考になるかと思い、こちらも残しておきます。

## 企業内申請用テンプレートを活用しよう

CEDECサイトの講演者公募画面によいテンプレートがありました。
(現在は公開してない模様)
 
企業の中には登壇を応募する前に社内審査が必要なケースがあり、それらに使える資料となっています。
また、複数人での登壇だったため登壇内容をすり合わせるのにも役立ちました。
 

## 記録写真は忘れずに

実は今回、どんな記録写真を誰が取るかという設定を忘れていました。
なので、ここに載っている写真は、メンバーが自発的に撮影してくれたり参加した知人から借りたものになります。
終了後のことを考えないのはまさにあるあるなので、気をつけようと思いました。
 

## 多ければ多いほどいい・・・とも限らない

今回やってみて、需要に対して完全にキャパオーバーだとわかりました。

  • 会場を大きくしてもらう
  • 椅子の配置を変え、もっと人が入るようにする
  • 難易度をあげるなど参加者を絞る
会場については運営側に決定権がある上に割と直前まで知らされないので、それ以外の方法は常に検討すべきです。
またこれ以上人が集まったとしても話せる人やテーマの量は変わらないため、果たしてそれだけの人を集めてまでやるべきかということも今一度考えるべきだと思いました。
 

## 優先入場は課題あり

より積極的な参加者が椅子に座ることで、議論が活発になる効果を見込んだものですが今回はうまく効果を発揮しませんでした。
参加人数も多く付箋を書く人の割合も高かったため、優先入場だけでプチ満員状態。
そして意見は立ち見からもたくさん出てきましたので、椅子に座ってもらうメリットが少なく、付箋を書かないけれど最前列に並んでいた人はすごい後ろの立ち見になってしまったのでさすがに申し訳なかったです。
というように、今回はデメリットの方が大きいと感じました。
 

## 付箋でテーマを集めること

付箋が集まりすぎました。課題感持つ人多すぎる!(いいことです
そのため整理をする時間がだいぶ必要になりましたし、登壇時間は変わらないため取りあげられないテーマが多くなってしまいました。悲しいです。
また後日ログとして公開するにあたっても、文字起こしをするには手間がかかるし、付箋をスキャンするだけでもそれなりの手間になります。
 
付箋で意見を書くというのは一般的な手法のためそこを疑いませんでしたが、CEDECのセッションであるならばテーマの募集をデジタルのフォームやアンケートツールに切り替えるのもありだなと振り返りながら思います。
事前に公開されるセッション情報欄やTwitterを使って告知をすることができますし、デジタルなら分類も簡単です。
会場ではプロジェクターも使えたので、そうやって分類した結果を見つつ進めることも容易いでしょう。
なによりリアルタイムに結果を共有することもできるので、参加者は自分の手元で集まった意見を眺めることもできます。
付箋は優先入場の証でもありましたが、上記のように優先入場の効果が性質上疑わしいのでいっそそれはやめてしまうこともありです。
 

## 文字だけでは話せる内容に限界があるかもしれない

これは後日別のイベント主催者と話して指摘された事です。
元々は僕が彼に「みんなから集めたテーマがコミュニケーションなどソフトスキル寄りだった」と話をした事によるのですが、デザインの話をするのに具体的なビジュアルがないと自ずとそうなってしまうそうです。
今回はどんな内容を話すかフリーだったので問題ではなかったのですが、もし今後ハードスキルとしてのゲームUIの話をしたい場合には、テーマの集め方などにもう一工夫必要だなと思いました。
 

## 椅子の配置変更など設営は事前に確認しよう

事前の段階でラウンドテーブルでやるので車座に椅子を並べたい、ということは共有していました。
しかし前日に「誰がそれを並べるのか」「どうやって並べるのか」その辺りを話してないと発覚。急遽運営スタッフへ相談する事になりました。
椅子並べについては会場スタッフが手伝ってくれる事になりましたが、万が一も考えこちらでもサポートとして登壇者の知人にも声をかけました。
方々に迷惑をかけてしまったので、こういった設営についてももっと事前にしっかり話すべきでした。
 

## 配置図を簡単でも用意しよう

当日の会場スタッフに説明するときに、手書きで書いた配置図が役に立ちました。
  • 椅子の並べ方
  • ホワイトボードの位置
  • 立ち見エリアの範囲
 
## 人が一箇所に集まるような行為は避けよう
 
CEDiLで資料を後日公開した際にお知らせしたり翌日の懇親会受付など、
QRコードでメールフォームを用意しました。
 
ただ、そのQRコードを印刷した紙を会場出口外の一箇所に置いたため、それを撮影するためにそこに人が固まってしまうことに。
Webのセッション情報にリンクを載せる、QRコードの紙を複数の場所に分散させるなどの対応を次回します。
 

## 登壇者は3人を1つの目安に

セッション登壇者にはCEDECのレギュラーパスが特典してもらえるのですが、1セッションにつき3枚までとなります(インタラクティブなど一部はさらに少ない)。
レギュラーパスは安くはないですから、あとでそれが発覚して気まずくならないよう、3人以下にするか、それ以上にする場合は誰がパスをもらうのか事前にきちんと話し合っておくのがよいかと。
 
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以上です。
最後になりますが、一緒に登壇やサポートをしてくれたメンバー、参加してくれた方や告知にご協力いただいた方、ありがとうございました!